ひのきの皮で屋根を

檜皮葺のお屋根

1300年にわたって継承される、
優雅な造形美と日本の風土に適応した「用と美」の伝統技法

小國神社のお屋根は、日本古来の伝統技法「檜皮葺ひわだぶきひのきの皮で屋根をく技法)の屋根です。

檜皮葺ひわだぶきは、飛鳥時代に広まり、奈良時代では上級建築に用いられ、平安時代には最も格式の高い屋根工法となり、神社建築などに用いられてきました。

樹齢百年以上の檜を伐採することなく皮だけを採取し、職人の手によって仕上げられる檜皮葺屋根は、三十年以上の雨風から御社をまもる機能性と繊細で美しい曲線美を兼ね揃えた、国外には例を見ない日本特有の文化資産としても認知されています。

※「用」と「美」とは
「用」は使い心地が良いことで「美」は美しさを示します。つまり、使い心地も良く、美しさを兼ね揃えた造形は調和がとれた理想的なものといえます。檜皮葺の屋根は、使い心地も良く、日本の風土に良く馴染み、調和のとれた優れたものです。

小國神社社殿の檜皮葺屋根
小國神社社殿の檜皮葺屋根
幾重にも重ねられた檜の皮
幾重にも重ねられた檜の皮
美しい曲線の檜皮葺屋根
美しい曲線の檜皮葺屋根

伝統の技

檜皮葺のお屋根

檜皮ひわだを剥ぐ

原皮師もとかわしの仕事

檜から檜皮ひわだを採取する

材料となる檜皮ひわだは、日本古来の特殊な方法で採取されます。 檜皮ひわだを採取する技術者は「原皮師もとかわし」と呼ばれ、材料となる檜皮ひわだの質は屋根の仕上がりや耐久性に大きく影響します。檜皮葺の建物の保存に欠くことのできない重要な技術です。

檜皮ひわだの採取は、原木が傷まないよう秋から冬場、木の中の水分の動きが少ない時期に行われます。木の根元部分からへらを差し込み、右手にへら左手に皮を持ち、下から上へ引き剥がしながら巾25㎝程度ごとに皮を剥ぎ取ります。
高所ではロープで体を固定しながら作業します。外皮を剥いだ樹木は、約10年程度で皮が再生され、再び採取できるようになります。

小國神社「檜皮葺のお屋根」原皮師の仕事①
小國神社「檜皮葺のお屋根」原皮師の仕事②
小國神社「檜皮葺のお屋根」原皮師の仕事③

原皮から丸皮まるかわ

皮師がはぎ取った檜皮ひわだ原皮もとかわは、通常長さ 75 cm、直径 40 cm、重さ 30 kgほどの筒形にまとめられます。これを丸皮まるかわといい、大規模な建物をく場合、1坪(3.3 m²)におよそ 5丸分(150 kg)が必要とされています。

小國神社では、檜皮葺ひわだぶき原皮もとかわを境内から採取しています。

「古代の森」と謳われる約30万坪(東京ドームの建物21個分)の御神域にある小國神社では、檜皮葺ひわだぶき屋根の原皮もとかわを境内にある御神木檜から採取しています。
境内を散策されると、原皮師もとかわしの仕事により赤くなった檜を見つけることができます。

小國神社「檜皮葺のお屋根」檜皮葺の原皮を境内から採取

檜皮ひわだを整える

仕上りに直結する熟練の仕事

洗皮あらいかわ」の工程

小國神社「檜皮葺のお屋根」洗皮の工程

洗皮あらいかわと呼ばれる作業では、原皮もとかわを一定の厚みに削ぎ、表面のヤニや筋を取り除いていきます。 「綴皮つづりかわ」の工程と共に熟練の技術を要する作業で、松や檜の丸太を輪切りにした当(あて)と呼ばれる作業台と檜皮ひわだ包丁1本で作業されます。

綴皮つづりかわ」の工程

小國神社「檜皮葺のお屋根」綴皮の工程

綴皮つづりかわと呼ばれる作業では、屋根の用途別に厚さや大きさ、形を整えます。 平葺き用には長さ75cm(2尺5寸)の皮を2〜3枚重ねて1枚の台形(上辺10cm、下辺15cm)を成形。先が尖った特殊な檜皮ひわだ包丁で重ねた皮を叩き、1枚に綴じていきます。

まる」から「そく」へ

小國神社「檜皮葺のお屋根」丸から束へ

檜皮ひわだ原皮もとかわは「丸」と呼ばれる単位に括られ、洗皮あらいかわ綴皮つづりかわの工程を経て、平皮・軒積皮・留皮・谷皮などの製品へと生まれ変わります。 整形された皮は「束」と呼ばれる単位に括られ、檜皮葺ひわだぶきの現場へ運ばれ、実際の屋根材として用いられます。

小國神社社殿群の屋根面積と使用する檜皮
小國神社社殿群の屋根面積と使用する檜皮

檜皮葺ひわだぶきに用いる「竹釘」を作る専門の職人「竹釘師」の仕事。

日本古来の檜皮葺ひわだぶきでは、鉄釘を使わず「竹釘」と呼ばれる真竹から作られる釘が用いられます。 専門の職人「竹釘師」が作る竹釘は、一坪(3.3平方メートル)当たり平葺箇所で2400~3000本という膨大な量が必要となります。

小國神社「檜皮葺のお屋根」檜皮葺に用いる竹釘

檜皮ひわだ

葺師ふきしの仕事

軒先を積み、整える

檜皮葺ひわだぶき屋根は軒先からはじまります。
軒先(軒付)や棟の部分に使用される檜皮ひわだは、軒付皮(のきづけかわ)と呼ばれ、十分水に浸したのち、土台となる裏板の上に積み、竹釘で打ち締め、手斧で切り揃えられます。

小國神社「檜皮葺のお屋根」軒先を積み整える

檜皮ひわだ

く」とは、屋根面を檜皮ひわだで覆っていく技術。平葺部分では、平皮を水で濡らし、4分(1.2cm)間隔で、1枚づつ横方向に敷き並べます。 葺師ふきしが横一列に並び、檜皮ひわだを竹釘で留めながら順次上の方向に葺き上げていきます。 屋根には唐破風・谷・箕甲などの部分があり、特に谷は雨水の滞留によって傷みやすいため、入念に施工されます。

1枚1枚丁寧に重ね、かつ素早くくには熟練された技術が必要です。中でも竹釘を片手で打つ技術は、檜皮葺ひわだぶきを支える職人技。不安定な屋根の上で、片手で檜皮ひわだを抑えながら素早く竹釘を打つ様は圧巻です。

平葺が完了すると、軒に品軒を積み、箱棟を組み立てるなど諸作業を経て、屋根葺工程を完了します。

熟練の葺師ふきしにより仕上げられた檜皮葺ひわだぶき屋根は、優雅で繊細な上品さが漂います。 特有の美しさと機能性を併せ持つ檜皮葺ひわだぶきは、様々な職人の技術により支えられています。

小國神社「檜皮葺のお屋根」檜皮を葺く①

小國神社「檜皮葺のお屋根」檜皮を葺く②

小國神社「檜皮葺のお屋根」檜皮を葺く③

職人紹介

檜皮葺のお屋根

株式会社 村上社寺工芸社

大正4年創業。兵庫県丹波市で100余年の歴史をもつ。日本古来の技法で、国の選定保存技術に指定されている檜皮葺ひわだぶき杮葺こけらぶきの職人技術をもち、国内の国宝・重要文化財等社寺仏閣の屋根をく。

創業年に「遠江国一宮 小國神社 檜皮葺ひわだぶき屋根の葺替え」を施工した記録が残る。

村上社寺工芸社の皆さん
村上社寺工芸社の皆さん
創業当時の記録
創業当時の記録
作業風景
作業風景

片手で竹釘を打つ 職人の技

20~30本程の竹釘を口に含み、舌を使って一本ずつ口から釘を出します。
金槌を握る手で釘を掴み、屋根金槌の「伏金」と呼ばれる部分で檜皮ひわだに差込み、金槌で打ち込みます。

金槌の格子状の溝により竹釘の頭が潰れ、抜けない形状で完全に打ち込まれます。
片手釘打の動画がご覧頂けます。

檜皮を整える

檜皮ひわだ