太古より伝えられてきた大切な「こころ」

私たちの祖先は自然に象徴される神々の恵みを受けて、その中で生かされていることに感謝し、
自らの心を正して清らかな気持ちで日々の生活を送ってきました。
そして、太古より大切に伝えられてきたこの「こころ」は
現代に生きる私たちにも「正直に生きようとする姿勢」や「おもいやりの心」として今に生きています。

日々の生活を「神さま」とともに

家の守り神として、神さまをおまつりする「神棚」。生活の中に「祈りの場」を設けおまつりするその心は、
私たちの祖先が長年にわたって伝えてきた日本人の麗しい伝統的習慣です。

御神札(おふだ)と神棚のまつりかた

心を豊かに育む「感謝」と「祈り」のこころ

日常を神さまとともにし、正直な心へと立ち返る。

物や情報があふれ、せわしない日常の中で、私たちは時に自分の心を見失いがちです。神棚の前で自分自身を深く見つめ、静かに手を合わせることで、見落としていた心に気づき、「今、生かされていることに感謝する正直な心」へと立ち返る事が出来ます。

このような節目の時間を日々の生活の中に持つことで、私たちの心は豊かに潤います。

お伊勢さま・氏神さま(うじがみさま)って?

伊勢の神宮は、日本全国に沢山ある神社の中でも特別なお宮で、最も尊い神さまである天照大御神(あまてらすおおみかみ)をおまつりしています。

天照大御神(お伊勢さま)

「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」は太陽の光のように私たちの生命を守り、育む神さまで、日本の総氏神様です。

氏神さま(うじがみさま)

「氏神さま」は地域の守り神として全国各地の神社におまつりされている私たちの最も身近な神さまです。 何世代にもわたりその地で私たちを守って下さいます。

御神札(おふだ)とは

神さまの力を宿した尊きもの。

神社のご祭神の名前や霊威を表す文字や図象・神社の名前が記され、清浄に奉製し、ご神前でお祓いをしたもので、神さまのご分霊でもあり神さまの力を宿したもので、様々な種類があります。

御神札(おふだ)

神宮のお神札は「神宮大麻」と呼ばれ、大麻とは「おおぬさ」とも読み、お祓いに用いる祭具を意味します。古くは伊勢の御師(おんし)によってお神札として配布されてきましたが、明治天皇の思召(おぼしめし)により、国民が伊勢の神宮を敬拝するために全国各地におわかちすることになりました。

神宮大麻は節目ごとに様々なおまつりを重ねて、皇室の弥栄、国家の安泰、各家庭の平安を祈り、一体一体丁重に奉製されています。

お正月を迎える前には、新しい神宮大麻と、地域をお守り下さる氏神様のお神札を一緒におまつりして、ご家庭の一年の無事と幸せを祈りましょう。

神棚の起源

職場やご家庭の中に、それぞれができるかたちでおまつりを。

「古事記」では、天照大御神が伊耶那岐命から授かった御頚玉を尊い玉の神「御倉板挙之神」(みくらたなのかみ)として棚におまつりしたことが伺えます。 ご神威が宿る尊いものをおまつりすることは神代から受け継がれてきた日本人のこころです。 神社には私たちを守り導く神さまがおまつりされ、お神札には神さまのお力が宿ります。 神さまのお力が宿る尊いものを身近におまつりすることは、天照大御神によって示された手振りです。

神杉の木霊(かみすぎのこだま)

中世以降は、伊勢の神宮に対する信仰が全国的に広がり、神宮からの御神札(おふだ)を清浄な棚におまつりしました。

最近は、モダンなデザインの神棚(宮形)や壁掛けできるものも多くなってきました。一般的には、お神札は家族揃ってお参りできる場所、目線より高い位置などに丁寧におまつりし、お神札の前面が南か東の方向を向くと良いとされています。

地域伝来のおまいりの仕方や、住宅事情も様々です。まずは、それぞれの生活スタイルに合わせ、「できるかたちでおまつりする」ことが大切です。

  • 家庭や職場に祈りの場のある暮らしを始めましょう。

神杉の木霊(かみすぎのこだま)

お神札・神棚のまつりかた

「お伊勢さま」「氏神さま」「崇敬する神社のお神札」をおまつりしましょう。

お神札と神棚のまつりかた

神棚は居間や客間など家族が親しめる明るく綺麗な部屋の天井近くに南向きまたは東向きに設置します。

宮形が大きい場合(三扉)みとびら

中央に神宮大麻(じんぐうのおふだ)、向かって右に氏神さま、向かって左に崇敬(すうけい)する神社のお神札。

宮形が小さい場合(一扉) ひととびら

一番手前に神宮大麻、次に氏神さま、次に崇敬する神社のお神札をかさねます。

  • 神棚のないお宅では、タンス・本棚の上を整え清浄にして綺麗な敷物(奉書など)を敷いておまつりしましょう。
  • 神棚は一家の清浄なところに、南か東向きに設けるのが理想ですが、家のつくりによっては方角にこだわる必要はありません。

毎朝の食事前に感謝をこめて

神棚には常に瑞々しい榊をお供えし、毎日朝食前に「洗米・酒・塩・水」をお供えした後にお参りしましょう。

日々のおまつり

日々のおまつり

日々のおまつり

お正月など家族にとって大切な日には野菜や果物などもお供えをします。そして、神さまにお供えをしたものは「お下がり」として家族でいただきます。
季節の初物やいただき物なども神棚にお供えしてから家族で頂戴したいものです。

全国に何万とある神社のなかには毎日のお祭りがどうしても叶わず、年に数回しかお祭りが奉仕されない神社も多くあります。
それでも神々は、毎日のお供えや奉仕が叶わなくても、それがやむを得ないことであるのならば、お怒りになることなく私たちを見守って下さっています。

  • 毎日できない時は、せめて月の1日、15日にはお供えしましょう。

日々のおまつり

服忌

家族にご不幸があった場合は忌中として故人を偲び、神棚に半紙を貼るなどしておまつりを遠慮します。

忌の期間は50日を目安とします。忌の期間が終われば、元の生活に戻るように、神棚も通常のおまつりをしましょう。また、忌の期間が正月をはさむ場合は、忌が明けてから氏神さまからのお神札を受けましょう。

親戚の方が亡くなられた場合は、お葬式を出したお家でなければ、通常のおまつりをして構いません。

注連縄(しめなわ)の張り方

宮形を据え、注連縄を張ります

注連縄は、そこが神聖で清浄な状態にあることを示します。

注連縄(しめなわ)の張り方

注連縄(しめなわ)の張り方

注連縄はその様式も多種多様で、表記も「〆縄」・「七五三縄」・「標縄」など様々です。
代表的なものとして「前垂注連」・「大根注連」・「牛蒡注連」があります。

神棚に取り付ける際は「右太左細」が原則で「紙垂」を挟み込みます。

紙垂(しで)の作り方

紙垂はその場所が神聖・清浄であることを示す象徴

紙垂の起源 紙垂は榊の枝や串・注連縄などにつけて垂らす紙片のことを指し、単に「垂」・「四垂」とも表記されます。

古くは木綿(ゆう)を用いていましたが現在では紙片を用いることが一般的です。
紙垂は簡単に作れますので下の絵を参考にして下さい。

注連縄は向かって右を元にして張ります。

紙垂(しで)の作り方

  1. 白紙を二つに折り、4等分し上と下と互いちがいに3分の2まで切りこみます。
  2. 向かって左の一片を頭にして、順々に手前に折り返します。
  3. 紙垂の大きさは随意で、紙の大小によってどのようにもできます。ただし、紙は必ずたてに使って下さい。
  • 注連縄(しめなわに)につける紙垂の枚数は一定しておりませんが、神棚や家の玄関に張る注連縄には4枚つけるのが基本です。その他の場合は、注連縄の長さによって調整して下さい。
  • 大相撲の土俵入りの際、横綱が紙垂を垂らしたまわしを締めている姿は四股踏むことが邪気を祓うという考えに基づいています。

御霊舎(みたまや)のまつり

神棚と御霊舎(みたまや)

いのちのつながりの実感、今に生かされている大切さを未来に生きる子供たちへ。

神棚

御霊舎(みたまや)

神棚

祖先のまつりは、神棚と別に御霊舎(みたまや)で行ないます。これは仏式 でいう仏壇にあたるもで、祖先の霊が鎮まる霊璽(れいじ)を納めるところです。御霊舎には御櫝(おとく)を据え、霊璽を納めます。

御霊舎は神棚とは別の場所に設けますが、間取りの関係で神棚の 下に設けることもあります。 御霊舎を神棚の下に設ける場合は、

  • 神棚を大人が見上げる位の高さ
  • 御霊舎は下半身の高さ

に設けます。神棚と御霊舎の座位を考えます。

霊璽(れいじ)

霊璽は仏式の位牌にあたるもので御霊代(みたましろ)ともいわれます。

その形状は木主・笏・鏡などがあります。
一般的には霊璽の表面には霊号が墨書され、裏面には「何年何月 帰幽享年何歳」などが墨書されます。

神葬祭には、仏式の戒名にあたるものがありません。
故人につける霊号は生前の身分に関係なく名前の下に「命」(みこと)、男性は「大人」(うし)・「彦」(ひこ)、女性は「刀自」(とじ)・「姫」等をつけることが一般的です。

神葬祭の一般的なながれ

神葬祭はいくつものおまつりから構成されています。

帰幽奉告(きゆほうこく) 故人が亡くなった旨を氏神さま、神棚、御霊舎に奉告します。
枕直(まくらなお)しの儀 遺体を整えて嬪室(ひんしつ:遺体を安置する部屋)に移します。
納棺の儀 遺体を柩(ひつぎ)に納めます。
柩前日供(きゅうぜんにゃっく)の儀 納棺から発柩(出棺)までの間、毎朝夕常饌(じょうせん)をお供えします。
墓所地鎮祭(ぼしょじちんさい) 遺体を納める土地を祓い鎮めるおまつりです。
通夜祭(つやさい) 夜を徹して個人の御霊を慰めるおまつりです。
遷霊祭(せんれいさい) 故人の御霊を霊璽(れいじ)と呼ぶ白木の「みしるし」に遷(うつ)し留めるおまつり。
発柩祭(はっきゅさい)出棺式 柩を霊輿(れいよ)に移して、葬列を組み葬場に向かう際のおまつりです。
発柩後祓除(はっきゅうごはらいのぞき)の義 家に残った家族と家をお祓いします。
葬場祭(そうじょうさい)告別式 故人の最後の別れをするおまつりです。
火葬祭(かそうさい) 火葬に付す際のおまつりです。
埋葬祭(まいそうさい) 遺体・遺骨を埋葬するおまつりです。
帰家祭(きかさい) 葬儀が滞りなく終了したことを霊前に奉告するおまつりです。
霊前祭(れいぜんさい) 葬場祭の翌日から、御霊を慰めるまつりを行います。
清祓(きよはらい) 五十日祭を終え家中を祓います。そして、神棚のおまつりを再開します。
合祀祭(ごうしさい) 故人の御霊を、仮御霊舎(かりみたまや)から先祖の霊をまつる御霊舎に遷すおまつりです。
百日祭 亡くなってから百日目に行います。
命日 毎月、毎年巡ってくる亡くなった日に故人を追慕します。
年祭 満一年、三年、五年、十年、以下十年ごとに行います。
まつりあげ 亡くなってから五十年目に行います。
日々のおまつり

毎日のおまつりは神棚と同じようにお米(ご飯)・お塩・お水をお供えします。
季節の物や故人の好物があれば併せてお供えしましょう。

年祭

年祭には毎年の命日(帰幽当日)に行なわれる「正辰祭」と、3年・5年・10年・20年・30年・40年・50年の命日に行なわれる「式年祭(年祭)」があり、故人の御霊を慰め、子孫繁栄を祈ります。

まつりあげ

子孫の手厚いおまつりが続けられ50年がたち(地方によっては30年)がたち、故人のことを知らない世代が遺族の代表となると、 それを一つの節目として、「まつりあげ」を行い、以後は個人の おまつりは行なわず、歴代の祖先とともにおまつりします。